関東ブロックでは「高等教育機関在籍の発達障害者への就労支援を考える」というテーマの下、2015年12月20日(日)に目黒区立青少年プラザにて第2回研究会を行った。参加者数は48名で、うち学会員は9名であった。大学職員の参加が多かったのが今回の研究会の特徴で、このほか就労移行支援事業所、医療機関、就労支援センターなどからも参加者があった。
研究会では前半に4名の講師による講演を行った。また受付時にあらかじめ質問用紙を参加者に配布し、講演の間に質問事項を記入してもらい、講演の後の休憩時間に質問用紙を回収した。そして後半では、参加者から寄せられた質問に対して講師が回答し、さらなる問題提起や関連事項の説明を行った。
前半ではまず眞保智子氏(法政大学現代福祉学部教授)が「教育現場が抱える現状と課題」と題して、障害のある大学生の在学状況、就労に困難を抱える学生の特徴、大学での支援体制の現状、初学年からの介入や就労体験の提供の必要性などを取り上げた。
次に山﨑順子氏(東京都発達障害者支援センター[tosca]センター長)が「発達障害とは」と題して、発達障害の特性、本人や周囲の人が直面する問題、望ましい支援の方向性などについて概説した。
さらに渡辺千尋氏(株式会社ゼネラルパートナーズ 新卒グループ)が「当事者を巡る雇用環境」と題して、本人と企業とのマッチングや、就職後の定着支援などについて取り上げた。
最後に野田明子氏(株式会社ゼネラルパートナーズ いそひと・LinkBe大手町)が、発達障害に特化した就労移行支援の取り組みを紹介した。野田氏が所属する就労移行支援事業所では、体験と振り返りを通じて自己理解を促すことに重点を置いて支援を行っているとのことである。
後半で最も大きな議論になったのは、精神保健福祉手帳を取得するメリットとデメリットといえるだろう。手帳を取得して障害者としての就職を勧める大学がある一方で、手帳を取得せずに就職し、何ら問題なく生活している人もいる。また手帳の取得が内定の取りやすさにつながらない一方で、発達障害をクローズにして新卒で就職すると入社後のミスマッチや離職につながりやすい、という指摘もあった。
この研究会について、参加者から「いろいろな分野の人の話が聞けてよかった」「高等教育機関での発達障害者の現状がわかった」「就労支援機関として、たくさんの気付きがあった」といった感想が寄せられた。また受付時に入会申込用紙を配布したところ、2名の入会希望者があった。総じて振り返ると、有意義かつ時宜を得た研究会だったといえるだろう。
Copyright © 2023 Japan Society of Vocational Rehabilitation. All Rights Reserved.